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回想法とは。家族の会話でできること、できないこと
介護の話題や施設の案内で「回想法」という言葉を見かけて、家でもできるのだろうかと気になった人もいると思います。回想法は、昔の経験や思い出を語り合うことを軸にした関わり方で、高齢者ケアや認知症の方への関わりの場で用いられています。この記事では、回想法がどこから生まれ、どんな考え方に立っているのかを説明します。そのうえで、家族が親の話を聞くときにまねできるところと、専門職に任せるところを分けて紹介します。
回想法の成り立ち
回想法の始まりは、アメリカの精神科医ロバート・バトラーが1963年に提唱した「ライフレビュー」という考え方です。ライフレビューは、日本語にすると「人生の回顧」、つまり自分の歩んできた人生をふり返ることを指します。この考え方が、のちに回想法と呼ばれる関わり方の土台になりました。
その後、この考え方をもとに、昔の思い出を語り合う関わり方が形づくられました。現在では、高齢者ケアや認知症の方への関わり方の一つとして用いられています。施設や地域の集まりでは、職員や専門職が進め役となって、参加する人の話を引き出していきます。
- 始まりはロバート・バトラーの「ライフレビュー」
- ライフレビューは人生をふり返ることを指す
- 高齢者ケアや認知症の方への関わりで用いられている
手がかりを使って思い出を語る
回想法の特徴は、思い出を引き出すための手がかりを使うことです。昔の写真、若いころによく聞いた音楽、なじみのある生活の道具などを前にして、そこから思い出される経験を語り合います。「昔のことを話してください」と言われても困ってしまう人でも、目の前に物があると話の入口が見つかりやすくなります。
たとえば、古いアイロンを手にしたみっちゃんが、「これは重くてね、母が炭を入れて使っていたのよ」と話し出す、といった場面です。そこから母親の姿や、家の台所、近所の人の話へと広がっていきます。手がかりは正解を答えさせる道具ではなく、話し手が自分のペースで記憶をたどるためのきっかけとして使われます。
- 昔の写真・音楽・生活の道具を手がかりにする
- 物があると話の入口が見つかりやすい
- 手がかりは答えを求めるためのものではない
家族の会話に取り入れられること
家族が親の話を聞くときにまねできるのは、手がかりを使うこと、話をよく聴くこと、話を否定しないことの三つです。実家のアルバムを一緒にめくる、昔の歌を流してみる、押し入れから出てきた道具について尋ねる。どれも特別な準備はいりません。話が出てきたら、口をはさまずに最後まで聴き、うなずきや短い相づちで続きを促します。
話の中身が記憶違いに思えても、その場で訂正しないことも大切です。年や場所がずれていても、本人にとってはそれが思い出の形です。どうしても確かめたいことは、あとで別の家族や古い書類で確認すれば足ります。聞き手が「教えてもらう」立場でいると、話し手は安心して話を続けられます。
- アルバムや昔の歌、古い道具を手がかりにする
- 口をはさまず最後まで聴く
- 記憶違いに思えてもその場で訂正しない
- 聞き手は教えてもらう立場でいる
専門職が行う部分との線引き
一方で、施設や医療の場で行われる回想法は、専門職が目的をもって計画し、進め方や参加する人の様子を見ながら行うものです。認知症の方への関わり方として取り入れる場合や、心身の状態に配慮が必要な場合は、家族だけで判断せず、主治医やケアマネジャー(介護の計画を立てる担当者)、施設の職員に相談してください。
また、回想法によって病気が治る、あるいは防げると考えるのは誤りのもとです。家族の会話は治療ではなく、あくまで親子で昔の話を楽しむ時間です。その時間が本人にとって心地よいものであれば、それで十分な意味があります。効果を期待して回数を増やしたり、話すことを求めたりしないようにします。
- 治療やケアとしての回想法は専門職が行う
- 心身の状態が気になるときは主治医や職員に相談する
- 家族の会話は治療ではなく、話を楽しむ時間
聞き手が無理をしないために
昔の話には、楽しい思い出だけでなく、つらい記憶も含まれています。話している途中で表情が曇ったり、黙り込んだりしたときは、無理に続けず、話題を変えるか、その日は終わりにします。「話したくないことは話さなくていいからね」と最初に伝えておくと、話し手も安心できます。
聞き手の側も、毎回たくさん聞き出そうとすると疲れてしまいます。今日は写真一枚分の話を聞けた、それで十分と考えて、気負わずに続けることが長続きのこつです。聞いた話は短くメモしておくと、次に会ったときの手がかりになり、家族の記録としても残っていきます。
- つらそうなときは話題を変えるか終わりにする
- 話さなくてよいと最初に伝えておく
- 聞いた話は短くメモして次の手がかりにする
よくある質問
家族が親と昔の話をすることも、回想法になりますか。
手がかりを使い、よく聴き、否定しないという考え方は、家族の会話にも取り入れられます。ただ、専門職が計画して行う回想法とは別のものです。家族の場合は、親子で昔の話を楽しむ時間として気負わずに続けるのがよいと思います。
親が同じ話を何度もします。止めたほうがよいですか。
無理に止める必要はありません。同じ話でも、聞くたびに細かいところや言い回しが違うことがあります。「そのとき誰と一緒だったの」と少しだけ角度を変えて尋ねると、新しい場面が出てくることもあります。気になる様子があれば主治医に相談してください。
どんなものを手がかりにすればよいですか。
実家のアルバムの写真、若いころに流行った歌、昔の台所道具や裁縫箱、学校の卒業証書など、本人になじみのあるものが向いています。家の中にあるもので十分です。一度にたくさん並べず、一つか二つから始めると話が広がりやすくなります。
回想法は、ロバート・バトラーが提唱した人生をふり返る考え方から生まれ、写真や音楽、道具を手がかりに思い出を語り合う関わり方として用いられてきました。家族がまねできるのは、手がかりを使い、よく聴き、否定しないことです。治療としての部分は専門職に任せ、家では昔の話を一緒に楽しむ時間として続けていきます。
この記事の年や制度の記述は、公開されている解説で確かめたものです。法律や医療の判断が要るときは、専門家にご相談ください。