親に聞く質問|場面で聞く
はじめての日に聞く質問
最初の1話。切り出し方と、90分の組み立て
最初の1回は、話の中身よりも「また話してもいい」と思ってもらうことが大切です。いきなり大事な出来事を聞くと、語り手は構えてしまいます。このページでは、切り出しと同意の取り方から始め、生まれた町や家の間取り、夕飯のおかずといった入りやすい話で30分、そこから一人の人や一つの場面を少し掘って30分、最後に気持ちを聞いて次の約束をするまでを、90分の順番どおりに並べました。休憩の目安も添えています。
一切り出し方と同意
最初の10分は、何のために聞くのか、どこまで話してよいのかを語り手と一緒に決める時間です。
今日は、若いころの話を少し聞かせてもらえますか。
「孫に残したい」など理由を一言添えます。気が乗らない様子なら日を改めます。
あとで読み返せるように、声を録っておいてもかまいませんか。
止めたいときはいつでも止められると先に伝えます。断られたらメモだけにします。
聞かれたくない話のときは、どんなふうに合図してもらうのがよさそうですか。
「それはいい」と言う、手を振るなど。決めておくと語り手が安心します。
今日は、どのくらいの時間なら疲れずに話せそうでしょう。
選択肢は「1時間」「90分」「休み休み」。短めに答えた時間を守ります。
この写真が撮られたころのことを、聞かせてください。
古い写真を一枚持っていくと話の入口になります。写っている人の呼び名を聞きます。
話したことを、いちばん読んでほしい人は誰ですか。
孫、きょうだい、自分自身など。答えが本の語りかける相手になります。
どのあたりの話からなら、気楽に話せますか。
選択肢は「子どものころ」「住んだ町」「仕事」。語り手に選んでもらいます。
二入りやすい話から(30分)
町、家、ごはん、遊びと、答えやすい話題を順に回します。深追いせず、声の調子が変わった話題を覚えておきます。
生まれ育った町は、どんなところでしたか。
川、山、田んぼ、商店街など目印を聞きます。地名が出たら書き留めます。
子どものころの家を、玄関から順に案内してください。
土間、縁側、ちゃぶ台、かまど。紙に間取りを描いてもらうと話が進みます。
一緒に暮らしていた家族を、一人ずつ呼び名で教えてもらえますか。
続柄と呼び名を控えます。祖父母や下宿人など、同居の形は決めつけずに聞きます。
夕飯によく出たおかずは、何でしたか。
煮物、干物、すいとん、カレーなど。誰が作り、どこで食べたかも聞けます。
学校までの道のりを、途中で見えたものと一緒に聞かせてください。
歩いて何分、橋や田んぼ、寄り道した場所。季節ごとの景色が本の場面になります。
放課後は、誰とどこで遊んでいましたか。
紙芝居、メンコ、ベーゴマ、ゴム跳び。遊び仲間の呼び名を聞きます。
夏休みで覚えている一日を、朝から話してもらえますか。
ラジオ体操、川遊び、親戚の家など。一日を順にたどると細かい場面が出ます。
近所でよく通ったお店や銭湯は、どんな場所でしたか。
駄菓子屋、八百屋、銭湯。店の人の呼び名や、かけられた一言が取れると効きます。
三少し掘る(30分)
前半で反応のよかった話題に戻り、一人の人、一つの場面に絞って、音や台詞、そのときの気持ちまで聞きます。
さきほどの話に出てきた人は、どんな人でしたか。
前半で何度か名前が出た人を選びます。年ごろ、背格好、口癖を聞きます。
その人がよく口にしていた言葉はありますか。
言い回しや方言のまま書き留めます。台詞は本の中でいちばん生きる素材です。
その場面では、どんな音や匂いがしていましたか。
ラジオ、汽車の音、セミ、炊きたてのごはん。五感を聞くと記憶がよみがえります。
覚えているなかで、いちばん古い場面を聞かせてください。
何歳ごろか、誰がそばにいたか。あいまいでもそのまま受け取ります。
家の中で決まっていた約束ごとは、どんなものでしたか。
食事の作法、門限、手伝いの分担など。誰が決めたかで家の空気が伝わります。
東京オリンピックの年(昭和39年)は、どんな毎日を送っていましたか。
学生、勤め、子育てなど。白黒テレビを誰とどこで見たかも手がかりになります。
はじめて自分で選んで買ったもののことを、教えてください。
何歳ごろ、どこの店で、なぜそれを選んだか。金額の細部は聞かなくてかまいません。
そのとき、心の中ではどんなことを思っていましたか。
「別に」と返ったら「うれしい、悔しい、ほっとした、どれに近いですか」と聞きます。
四終わり方と次の約束
最後の15分は、今日の話を振り返ってもらい、書かずにおく部分を確かめ、次に話す日と話題を決めます。
今日話してみて、いちばんよく思い出せた場面はどれでしたか。
語り手が選んだ場面は、本の最初の章の候補になります。
話しながら、久しぶりに思い出した人はいましたか。
名前や呼び名が出たら、次の回でその人の話から始められます。
いま振り返ると、あのころの自分にどんな言葉をかけたいですか。
答えにくければ「あのころの自分は何歳くらいでしたか」から入ります。
今日の話のなかで、本には書かずにおいてほしいところはありますか。
毎回最後に確かめます。外す部分は録音やメモにも印をつけておきます。
言い足りなかったことがあれば、ひとつ教えてください。
出なければ無理に求めません。次の回の最初に同じことを聞きます。
次は、どのころの話を聞かせてもらえますか。
選択肢は「学校を出たあと」「仕事」「結婚や子育て」「住んだ町」など。
次に会うとき、見せてもらえる写真や品物はありそうですか。
アルバム、手紙、賞状、道具など。品物があると次の回の入口になります。
この話題の聞き方のコツ
避けたい聞き方
掘り方の実例
相手の言葉を一つ拾って、場面と台詞を取りにいく流れです。語り手は架空の人物です。
聞き手子どものころの家を、玄関から順に案内してもらえますか。
語り手玄関を入ると土間でね、右に台所があった。かまどがあって、冬の朝はそこがいちばん暖かかった。
聞き手冬の朝のかまどのそばには、誰がいたんですか。
語り手母だよ。まだ暗いうちから火をおこしてた。わたしは寒いから、そばにしゃがんで手をあぶってたね。
聞き手手をあぶっているとき、お母さんは何か言っていましたか。
語り手「火の粉が飛ぶから、そこまでにしな」ってね。毎朝同じことを言うんだ。でも追い払いはしなかった。
聞き手毎朝同じことを言われて、そのころはどう思っていましたか。
語り手うるさいなと思ってたよ。でも、あれを聞くと一日が始まる感じがしてたね。
聞き手いま、その声を思い出してみると、どうですか。
語り手土間の匂いまで思い出すね。母がわたしのために早起きしてたなんて、あのころは考えたこともなかった。
最初の1回で集まるのは、町の景色や家の間取り、夕飯のおかずといった小さな場面です。それが本の第1章の土台になり、次の回で話す仕事や結婚の話にも、同じ町と同じ家族が登場します。今日出てきた呼び名や台詞はそのまま書き留め、次に会ったときの最初の一言に使います。
語りAI物語で聞く
この質問を、AIが聞き手になって
一つずつ聞きます。
答えはスマホのマイクで話すだけ。相手の言葉を拾って掘り、話した分が年表に貯まり、一冊の本になります。
登録なしで3話まで無料。親御さんの隣で、聞き役のあなたが操作しても使えます。
見本「ひだまりの食卓から ―多摩川の風と、団地の花壇と、あなたへ―」(みっちゃん)
見本「できたことを、先に数えて――雪国から教室へ、あなたへ贈る言葉」(ふみえ先生)